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「ハヤテのごとく!」
世界がこんなにも憎いから

世界がこんなにも憎いから

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 ――私は壊れてしまったから。
 アナタを壊してしまったから。
 ずっと、アナタは私のモノになればいい。
 お腹もすかず、何もしなくてもよい姿になって、アナタは私と一緒に居よう?
 何故? そんなの簡単さ。

 ――ただただ私は、壊れてしまったから。


【世界がこんなにも憎いから】


 ――憎い。
 私は、雲一つなく晴れ渡る空を見上げ、そう呟いた。
 小鳥が私の視界を舞うように横切り、夕焼けに羽を煌めかせる。
 それは、きっと他人から見たら美しい情景なのだろう。
 けれど。……それすらも、私は憎かった。

 憎くて、憎くて、憎くて。

 どうしようもなく世界が、全てが憎くなって。
 じゃあ、全て壊してしまえば良いんだ。そう気がつくのに、時間はかからなかった。
 憎い。なら、存在を消して、憎くなくなるまでガラクタにして。
 しかし、つまりそれが示す事を私は理解していた。
 自分が、既に壊れてしまっている事。
 ネジが一本外れたように、どこか大切なものをどこかに忘れ、そして壊れてしまった事を。

「私が壊れていなかったのは何時の事だったかな」

 私はそう呟き、記憶の氷山をかきわける。
 あぁ、あの頃はまだ。まだアナタが私に相談を持ちかけてきた時は私は壊れて居なかったろう。

『ねぇ……彼、私の事どう思ってるかな?』

 ようやく芽生えたアナタの女の子らしい感情。
 素直に、嬉しかった。
 アナタが女の子らしくなったのもそうだけど、その感情を私に打ち明けてくれた。
 それが、ただ素直に嬉しかったのだ。
 アナタはプライドが高いし、妙に子供だ。だから、信頼できるような人間にしかその感情を打ち明けはしないだろう。
 だから、その気持ちが私に向いて居ないとしても――もともと、諦めていた感情。見上げているだけにした感情だ。諦めるのは、諦めたフリをするのは簡単だった。
 少しずつ、少しずつ。私は彼とアナタを近づけた。
 さながら恋のキューピッド。
 理沙と泉はさりげなく「良いのか?」なんて聞いて来たけど。
 その時は、良かったよ。私も壊れて居なかったし。
 何しろ私はアナタが幸せならそれで良かったと言うのもある。

「――じゃあ、何時。……どうして?」

 どうして? はは……!! はははははは!!
 何故、ね。決まってるじゃないか。アナタのせい。

『彼がね?』
『彼がね……』
『彼が、彼が……』

 来る日も来る日も彼彼彼彼彼彼彼!!
 口を開く度に彼の事ばかり。
 いや、良かったさ。初めのウチは。次第に、アナタの口から零れるのは『キス』だの何だの、そんな事ばかり。
 その頃からだ。心にヒビが入って、私が壊れ始めたのは。
 そりゃ、アナタはそれで良かったろう? 何せ、幸せの絶頂だったからな。
 けれど私は違う。自分の想いを殺して、殺して、殺して。でもそんな私の想いとは裏腹にアナタは私にのろけ話ばかり。
 誰でもおかしくなるさ。誰でも嫉妬に狂うさ。
 その想いが、絶対に叶わないと知っていても。


 ――――だから、私は壊れた――――。


 だって、アナタが好きなんだもの。
 自分が壊れた事には直ぐに気がついた。
 朝から晩までアナタの事を考えて。
 朝から晩までアナタを見て居た。

 あはは。でもね。
 こんな壊れた欠陥品が、アナタと釣り合うなんて事は無い。
 その事も、ちゃんと知っていたよ。
 だってアナタは完璧だから。
 アナタは私の誇りだから。
 でも、私は壊れていたから、アナタを手に入れたかった。

 来る日も来る日もどうしたら良いか考えた。
 それで、気付いたんだ……

 あぁ、そうか。私が壊れてしまったのなら。
 アナタも壊れれば、それで良いんだ。
 そうしたら、きっと私と釣り合う。
 ね? 簡単でしょ……?
 皆が皆、壊れれば果たしてそれは壊れた事になる?
 ならないよ。壊れた事が普通。むしろ、壊れて無い方が壊れた事になる。
 いつもこの世で勝つのは多数派だから。

 だから。壊れようよ、ヒナ――







 ――カラン。
 木の刀が、生徒会室の床に落ちる乾いた音が耳に届いた。
「何よ、美希……どうしちゃったの? ねぇ、美希? ねぇ……」
「遅いよ、ヒナ。気付くのが。どうしたの? ちょっと、遅かった」
 そう言って、私は目の高さまで手に握るモノを持ち上げる。
 銀色の、刃。それにこびりつく、赤い、赤い、液体。
「……美希、ねぇ……」
 それを見て、ヒナの顔は引き攣った。
 あはは。私は軽く笑みを零す。
 あんなに完璧で、強くて、私の憧れだったヒナ。
 それが、今、触れば壊れる程、恐怖に身を凍らせている。
 他ならぬ私の手で。
「そ、そ、そそそそれ。その赤いの、誰、の……?」
「これ? これ、ね。……聞きたい?」
「……………………」
「あはは。これはね。ヒナの、大切な大切な、彼の――」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
 絶叫。
「いやだ、いやだ、やめて、やめてよ、やめてよ美希ぃ……」
 ……愛おしい。取り乱すヒナを見て、私はそう感じた。
 やっぱり、アナタは彼のものでは無くて、私のモノでなければならない。
 だってそう。
 ヒナの事を一番想っているのは私。
 ヒナの事を一番知っているのは私。
「そうでしょ? ヒナ?」
「美希ぃ……」
 涙にぬれた、顔を見て。
 私は腕を振り、呟いた。


「ようこそ。コチラ側へ」







 ――ねぇ、何か言ってよヒナ。
 どうして黙ったままなの?

 夕焼けに照らされる生徒会室。
 そこに端正な顔立ちで、滑らかで艶やかな髪が浮かび上がった。
 彼女の眼はただ静かに虚空を見つめ、まるで、その姿は壊れた人形のよう。

 ――あぁ、恥ずかしいの? 大丈夫、皆、壊れたから。
 だから、恥ずかしくないよ。

 彼女の水気を失いかけてる唇からは、紅い紅い血が流れ出て。
 夕焼けの朱と合わさり、それが何の赤なのかを惑わせて。

 そして、響く。

 ――あは。あはははは。ほら、早く何か言いなよ。ヒナ。

 狂った、笑い声。

 けれど、彼女は、まだ気付かない。
 この世で壊れているのは、彼女、ただ一人と言うことを。
 彼女は狂った笑いを一人あげ、狂った笑みを顔に浮かべる。






 ――そして、彼女は。いつまでも一人壊れたままだった。






END.


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